僕は阿佐田哲也さんこと色川武大さんが好きで、むかしから機会があると読んでいる。もうほとんどの著作を読んだと思っていたのだが、まさかの新刊発売。亡くなったのが平成元年だったから、もう本になってない文章なんてないだろうと思っていたので、驚きつつも喜びつつ、早速読む。タイトル「三博四食五眠」(幻戯書房)。未刊行作品の中から喰べることに関したエッセイをまとめたもの。相変わらずの阿佐田節で、いろいろとおもしろかったのだけれども、その中でも感心したのが、満腹に関する一文。以下引用。「何かを喰い終わったときほど不愉快なものはないので、腹は突っ張らかり、涙と鼻水が流れ出し、喉が乾き、胸がやけ、そのうえもう喰えないという絶望感が重なる。腹を空かしていたときがなつかしい。腹を減らして、何かが喰いたいと思っているときが天国である。」


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