今は昔。東京の歌舞伎座の裏に立ち食いそば屋さんありて。そこで私はずるずる、おそばを手繰っておりました。ずるずる。そこに着流し姿のお客さんが入店。「三階さんかな?」と我思う(歌舞伎の端役の役者さんのことを「三階さん」と言うのだそうです)。で、その三階さん、おそばの食べ方が、滅法きれい。見ほれてしまう。それはまるで舞踊のように、おそばを食べる。僕はずるずる食べているけど、三階さんはつるつる食べているように見える。濁音がない。つるつる。「なんであんなに美しく食べられるのだ?」と思い、ちらちらと観察。その観察結果。1.姿勢良く立つ。2.盛ってあるおそばの山の頂上から取っていく。3.箸を入れる角度は垂直気味に。4.セイロから取るおそばは少量。5.おそばを、そば猪口にひたひたに浸すことはしない。6.セイロから取っておつゆにつけてすする。セイロから取っておつゆにつけてすする、を流れるように繰り返す。・・・といったところでしょうか。「おそばを取る量は少なく」というのが発見でした。「すすってお口の中でいっぱいになる量」を取れば良いのですね。おそば多く取ってすすると口の中がいっぱいになって、噛み切らなきゃならなくなる。そうすると動きが滞るんですね。さらに噛み切った、おそばがそば猪口に残るさまも美しくない。「私もダンスを踊るようにおそばを食べたい」と思い、爾来、気をつけているのですが、けど、やってみるとむずかしいんだよなー。



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